7年間放置の祖母の空き家
宅建の資格を取って間もない頃、母がつぶやいた。
「おばあちゃんの家、私がもらったんだけど何もしてないのよねぇ…」
おばあちゃん、つまり私の祖母(母の母親)は7年前に95歳で亡くなった。
祖父が亡くなった後、一人暮らしをしていた祖母は、亡くなるその日までとても元気だった。「ピンピンコロリ」である。
祖母の家は最寄り駅から車で30分程、周囲には畑が広がり、家がポツポツと点在するかなり田舎にある。
祖母が亡くなった時、私は仕事の都合で遠方で暮らしていたため、葬式の後、祖母の家をどうしたかなんて全く気にもとめていなかった。
普通に、母やその兄弟で片づけや処分をしていると思っていたが、まさか何もしていなかったとは…!
母のつぶやきを受けて、あらためて祖母の家を見に行った。
およそ100坪の敷地に建つ木造平屋建て延べ床70㎡ほどの一軒家。
築50年以上は経っている祖母の家は、ただでさえ古いのに、祖母が亡くなってから「何もしてない」ため、一層古くなり、もう人が住める状態ではないどころか、片づけに入る最中に家が崩れてきそうな気がする。
敷地内には畑跡や柿などの様々な木々、井戸、納屋があり、何も手入れをしていないため荒れ放題。
納屋の中は誰が放り込んだのか、溢れるほどのゴミで埋まっており、今にも傾きそうな状態だ。昔の人にありがちな、よく言えば物を大切にしていた、悪く言えば物を捨てないで溜め込んでいたようで、家の中には物がたくさん残っていた。
祖母が普段使っていた毛布はボロボロで寒さ対策にはほど遠い薄っぺらいものだった。
しかし、亡くなってから祖母の押入れを覗いたら、デパートの立派な箱に入った新品のブランド物の毛布が何枚も出てきたと言う。
それらの新品の毛布は、棺桶の中で祖母の遺体をくるむのに使われた。
大事にとっておいた暖かい新品の毛布を、亡くなってから初めて使ったなんて、本当に笑えない話だ。
とにかく、そのように祖母が溜め込んだ膨大な遺品が何も手付かずのままの状態だった。
敷きっぱなしの布団、食器棚の中にあるたくさんの皿、台所には調味料が置きっぱなし…本当に祖母が亡くなってから「何もしてない」状態だった。
さらに、母が「私がもらった」と言うのに、名義変更もしていないという。
なのに何故、「私がもらった」と言っているのか?
それはさかのぼること20年前。
祖父(母の父)が亡くなってから、母はことあるごとに祖母に「この家が欲しい」とお願いをしていたという。
それを受けて祖母は、自分が死んだ後はこの土地や建物を母に譲ることを公正証書遺言に書いて残した。
母には弟がいるのだが、弟には祖母が所有していたもう一つの土地(更地)を譲ることにしたそうだ。
公正証書遺言は、公証役場で公証人に作成してもらう遺言で、2人以上の証人が必要だったり、手数料がかかったりと、かなり面倒くさい手続きが必要だ。
それにも関わらず、わざわざ祖母はその手続きを行っていた。
祖母が、愛する娘の要望に応えて手間をかけてそのような手続きをしていたにも関わらず、死後7年経っても名義さえ書き換わっていない、そして、片づけさえしていないという体たらく。
母曰く、「あの頃(20年前)は私も若かったからね。。(祖母の)家を貰えたらお得だーと思っちゃってたのよ」
おばあちゃんは、草葉の陰で「あのやろう」って思っているね…。
仮に、この状態のままで母が亡くなったら、今度は母の娘である私に責任が回ってくる。
亡くなっている祖母から孫への相続手続きはさらに複雑になってしまう。
イカン、何とかしなければ。
宅建の資格取得の際に学んだことを頼りに、私は名義変更の手続きをかって出た。
インターネットで手続き方法を調べると、公正証書遺言書があれば、手続きはそれほど複雑ではなさそう。
おばあちゃん、ありがとう。手間をかけた公正証書遺言書が役に立ったよ。
もしかして、ズボラな娘のことを心配して生前にキッチリと手続きしてくれていたのかな…?
母の戸籍謄本や不動産の登記簿など必要書類をそろえ、ウェブサイトからダウンロードして申請書を作り、法務局で申請。
申請から数週間で無事、すんなりと母の名義に変えることができた。
さて、膨大な遺品や、崩れそうな建物はどう処分したらいいのカナー?
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